映画史を語る上で欠かせない作品の一つ、「マッケンロー!」。1971年公開のこのアメリカ映画は、当時の社会状況を反映した青春群像劇でありながら、同時に不条理な運命に立ち向かう若者たちの姿を描いた、痛烈な社会風刺にもなっている。
監督は「卒業」「Easy Rider」といった傑作を生み出したマイク・ニコルズ。彼は、この作品で当時新進気鋭の俳優であったアート・ガーファンクルを主演に起用し、彼の歌唱力と演技力を最大限に活かしている。ガーファンクルの演じるマッケンローは、アメリカの大学に通う大学生だが、ベトナム戦争への徴兵を拒否するなど、当時の社会の混乱を体現するような人物だ。
物語は、マッケンローが大学で出会った仲間たちとの友情と、彼らが直面する様々な問題を通して展開していく。仲間には、後の大物俳優となるダスティン・ホフマンやキャサリン・ロスなどが出演しており、彼らの演技も相まって、作品はリアルな人間ドラマに仕上がっている。
「マッケンロー!」のテーマ:青春と葛藤、そして希望
「マッケンロー!」が魅力的な理由は、何よりもその深いテーマ性にあるだろう。
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青春と葛藤: 1970年代アメリカはベトナム戦争反対運動や公民権運動など、社会不安が蔓延する時代であった。映画の舞台となる大学も、そんな時代の波に翻弄され、学生たちは将来への不安や社会との葛藤を抱えている。マッケンロー自身も、徴兵を拒否することで、社会システムに反発し、自分自身の道を模索していく姿を描くことで、若者たちの葛藤と成長がリアルに描かれている。
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不条理な運命: 映画のタイトルにもなっている「マッケンロー!」という言葉は、ベトナム戦争で戦死した兵士の名前である。マッケンローは、彼の人生を歌った楽曲を歌い、彼の記憶を生き返らせようとする。しかし、彼の運命は悲劇的なものであり、映画は社会の不条理さを露呈させている。
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希望: 厳しい現実にも屈することなく、自分たちの信念を貫こうとする若者たちの姿には、希望を感じさせるものがある。彼らは、互いに支え合い、困難を乗り越えていくことで、未来への可能性を示している。
「マッケンロー!」の音楽:アート・ガーファンクルの歌声
「マッケンロー!」のサウンドトラックは、アート・ガーファンクルが歌うオリジナル曲で構成されている。彼の美しい歌声と、映画のテーマに合致した歌詞が、作品の世界観をさらに深めている。
特に印象的なのは、「Mrs. Robinson」や「The Sound of Silence」などの楽曲を世界中に広めた、サイモン&ガーファンクル時代のヒット曲を彷彿とさせるメロウなバラード曲「Where Have All the Flowers Gone?」である。この曲は、ベトナム戦争の悲惨さを歌い、映画のテーマを象徴するような曲となっている。
「マッケンロー!」をより楽しむために:時代背景を理解しよう!
1970年代のアメリカは、ベトナム戦争、公民権運動、ウォーターゲート事件など、社会が大きく揺れ動く時代であった。これらの出来事は、「マッケンロー!」の世界観に深く関わっており、時代背景を理解することで、作品のメッセージをより深く理解できるだろう。
- ベトナム戦争: 映画では、マッケンローが徴兵を拒否するシーンが登場する。当時、アメリカではベトナム戦争に対する反対運動が激化しており、若者たちは徴兵を拒否したり、カナダに亡命したりするケースも増加していた。
- 公民権運動: 1960年代後半から1970年代にかけて、アメリカで黒人による公民権運動が活発に行われた。映画では、黒人学生が大学内で差別を受けているシーンが登場し、当時の社会問題を反映している。
「マッケンロー!」は、青春、葛藤、そして希望を描いた傑作である。時代背景を理解することで、作品の深みを感じることができるだろう。ぜひ一度、この映画を観てみてほしい。